日本の警察と海外の警察の違い
警察は、権力行使をもって治安を維持する行政組織であり、世界中どの国にでもありますが、国が違えば、その役割や持っている権力も違ってきます。

今回は、日本とアメリカの警察を比較しながら、国によって警察という組織がどのように違うのか解説していきたいと思います。
アメリカでは警察がいっぱい?

日本では、国の機関として警察庁が置かれていますが、実際に捜査や取り締まりなどの執行を行うのは警視庁を始めとする都道府県警察です。

そのため、日本で警察といえば基本的には1つの組織を指しますが、実はアメリカではたくさんの警察組織が存在します。

アメリカは連邦制であり、州による権限が日本の自治体と比べて
非常に大きいです。

そのため、州、群、市、町、村といった自治体が法務執行機関として独自の警察を持つことができます。
よく海外ドラマや映画に出てくる「ロス市警」とは、カルフォルニア州のロサンゼルス市の警察組織のことです。

日本でも、都道府県警察という形で、自治体によって警察が分かれているようにも思えますが、自治体によって独立した警察組織を持っているわけではありません

日本の都道府県警察では、必要であれば管轄外の都道府県でも捜査をすることができますが、アメリカの警察は基本的に管轄の自治体以外で捜査をすることはできません。

ただし、FBI(連邦捜査局)など連邦政府に属する捜査機関は、全ての州で捜査をすることができます。
日本とアメリカによる銃の違い
日本とアメリカの警察の違いは、組織の数だけではありません。
特に、日本とアメリカの警察では、銃に対する扱いが大きく異なります。

日本の警察官も銃を所持していますが、実際に発砲する機会はそこまで多くありません。

犯人を拘束するためには、素手や警棒などを用いいた逮捕術と呼ばれる術技が使われることが基本的です。

仮に日本の警察が銃を使う場合は、すぐに相手を打つことができるわけではなく、警告を発し、威嚇射撃をして、始めて相手を狙うことができます。



一方で、銃社会であるアメリカでは、犯人が銃を所持している可能性が高く、まずは犯人を無効化させることを優先するために日本よりも積極的に銃を使う傾向にあります。

また、日本とアメリカでは警察が持っている銃の種類も異なります。
アメリカの警察では、オートマチックの銃が主流であり、10発以上の銃弾を詰めることができ、予備カートリッジを使えばより多くの弾を打つことができます。

一方で、日本の警察に配備されている銃は、今なおリボルバー式が主流で、オートマチック銃の配備は限られています。いずれも銃弾は5発程度しか入っていません。


リボルバー式のメリットは、もともと安全装置が機構に組み込まれているため、安全装置を外す作業が必要なく、弾詰まりを起こすなど不具合の可能性が低いことです。 (リボルバー式もオートマチック式も暴発防止のためトリガーの部分に安全ゴムが使用されている)


そのため、銃を使用する機会の少ない日本の警察には誤操作を防ぐ意味でもリボルバー式の方が良いのかもしれません。

また、アメリカでは少し変わった銃の制度があります。
アメリカの一部の州では、犯罪者から押収した銃を再利用する場合があります
たとえばテキサス警察では、使えるものをディーラーにおろし、財政の足しにしています。


もちろん、日本でそのようなことは行われておらず、押収された銃は、事件の証拠として保管された後、証拠として必要がなくなれば溶鉱炉で処理されることになっています。


逮捕に対する認識の違い
警察とは、捜査機関であり、犯罪者の逮捕も大きな役割の1つです。
しかし、日本とアメリカでは、警察による逮捕の認識が少し違います。

日本では、逮捕を行う場合、現行犯でない限りは逮捕状が必要です。
このように原則として逮捕には令状が必要であり、罪を犯しているという証拠が重視されています

しかし、アメリカにおける逮捕とは、日本のように法的な処置としての逮捕というよりも、身柄を一時的に拘束するための逮捕という意味合いが強いです。

銃社会であるアメリカは、犯罪を犯しているかどうかの証拠を集めるよりも、
まずは危険を排除しなければいけません。

そのため、犯罪を犯しているという十分な証拠がなくても、警察官の判断で危険性があるとみなした場合は、身柄を拘束することを優先されます。

アメリカでは、逮捕してから詳しいことを調べる傾向があるので、日本の感覚で言うと「そんなことで?」と思うような場面でも逮捕されてしまうケースもあります。

アメリカの警察官の給料は安い?
FBIの捜査官は高学歴で給料も地方の警察官に比べて多い傾向にあります。
しかし、州警察や市警察など、各自治体に所属する警察官の給料は、そこまで良くないようです。

日本の警察官は、公務員ということもあり、給料は一般的な企業と比べても決して悪くありません。

日本の警察官の平均年収は、令和2年度で700万円程度といわれています(巡査で360万円、巡査部長で550万円程度など、階級によって差がある)。


一方で、アメリカの警察官では比較的給料の良い州や市でも平均500万円程度の年収のようです。


ただし、アメリカの警察では副業が認められています。

日本では公務員の副業は、原則として認められていませんが、アメリカは個人の自由を尊重する国ということもあってか、公務員であったとしても就業時間外の活動について、日本ほど厳しい制限を設けていません

そのため、許可をとれば警察官であっても副業が可能です

アメリカでは副業や兼業といったワークスタイルは一般的であり、十分な収入を確保するために多くの人が副業をしています。

それは警察官でも同じようで、中には自分でお店を開く警察官もいるようです。

ちなみにハリウッドスターであるスティーブン・セガールは、俳優業をしながら2012年からテキサス州ハズペス軍保安局で執行官(警察官)を勤めています。

この場合は、警察官の方が副業にあたるかもしれませんが、どちらにせよ日本では考えられないことでしょう。

まとめ
同じ警察といっても、国が違うと体制や役割が大きく違ってきます。

住民を犯罪から守るという役割という意味では同じかもしれませんが、国としての体制や文化が異なることで、警察として犯罪との向き合い方も違ってくるのかもしれません。

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